フィンランドの歯科医療から学ぶ、予防を日常にする工夫――このは歯科での懇談会レポート
10月2日、このは歯科で、フィンランドから日本に実習に来ているエレンさんと、歯科医師・歯科衛生士による懇談会(Haris代表の梅澤も通訳として参加)を行いました。
予防歯科の国として知られるフィンランド。今回は、フィンランドの歯科現場を経験し、フィンランドで歯科助手の学校に通うエレンさんと会話しながら、現地の歯科医療について貴重なお話を伺うことができました。
パブリックとプライベート、二つの歯科医療
フィンランドの歯科医療には、公的な「パブリック」と民間の「プライベート」があります。パブリックでは公的資金によって費用が支えられ、18歳未満は無料、成人は所定の自己負担で診療を受けます。一方、プライベートは一般に患者さんの費用負担が大きくなります。
受診する側のイメージとしては、日本の保険診療を扱うクリニックと、自由診療のみを扱うクリニックの違いに近いかもしれません。ただし、フィンランドでは公的機関と民間という運営主体の違いもあります。パブリックは、経済的な事情によって必要な歯科医療を受けられない人をなくすための、公的な保障を担う仕組みといえます。
雇用についても違いがあるということでした。エレンさんのお話では、パブリックで働くスタッフは、日本でいう準公務員のような立場とのことです。一方、プライベートでは、各クリニックの経営方針に応じて雇用形態や働き方が決まるということでした。
パブリックとプライベートの違いは、患者さんの費用負担だけではありません。そこで働く人たちの雇用やクリニックの運営にも関わっていることを知り、日本との違いに気づくことができました。
ちなみに、エレンさんのお話では、フィンランドの勤務時間は週37〜38時間ほど、1日約7.5時間が目安とのことでした。日本でよく見られる週40時間・1日8時間という働き方に比べると、少し短い時間です。
18歳未満の子どもを支える、手厚い歯科医療
フィンランドでは、18歳未満の子どもは公的な歯科医療を無料で受けられます。エレンさんのお話では、集団で検診を行うのではなく、半年に1回程度、歯科医院を受診して個別指導やメインテナンスを受けるとのことでした。エレンさんのお話では、学校の隣や近くに歯科クリニックがあり、子どもが受診しやすい環境が整えられているとのことでした。また、定期的な歯科検診を受けていない子どもがいる場合には、行政から家庭に受診を促す通知が届き、家庭の状況も確認されるということでした。検診の機会を設けるだけでなく、受診していない子どもにも働きかける仕組みがあるのです。
日本にも学校歯科健診などの機会はありますが、今回のお話からは、フィンランドでは18歳未満の子どもたちに対して、手厚い支援が行き届いている様子が伝わってきました。
フィンランドの教育課程について
フィンランドでは、歯科助手になるために職業教育課程で学び、診療補助や滅菌、器具管理など、現場で必要な知識や技術を身につけるということでした(歯科衛生士は大学などの高等教育課程)。歯科助手は通常3年のコースですが、すでに持っている資格や実務経験が認められる場合には、1年で修了できるコースもあるとのことでした。ちなみに、歯科衛生士の場合は約3年半の課程で学ぶそうです。
日本では歯科助手が入職後に現場で仕事を覚えるケースも多いため、歯科助手を目指す段階から専門的な教育の道があることは、興味深い違いでした。
キシリトールは、暮らしの中の身近な存在
今回、特に印象に残ったのがキシリトールのお話です。エレンさんによると、フィンランドでは幼児の頃から、歯科医院でブラッシングとともにキシリトールの摂取が積極的に勧められているそうです。
その際には、年齢や状況に合わせて、無理なく続けられる方法を一緒に考えて提案するとのこと。例えば、ミントなどの強い味が苦手な子どもにはストロベリー味を勧めるなど、取り入れやすくする工夫があるそうです。
購入する場所も歯科医院だけではありません。スーパーやドラッグストアなどに、ガムやタブレットをはじめ、さまざまな種類のキシリトール製品が並んでいます。食材やお菓子を買うのと同じように、日常の買い物で選べるのです。
歯科医院で勧められる予防の習慣が、普段の買い物や暮らしにつながっている。キシリトールがそれほど身近な存在であることに、予防歯科の国・フィンランドらしいユニークさを感じました。
海外を知ると、いつもの診療が違って見える
海外の歯科医療を学ぶことは、私たちが日々行っていることを、少し外側から客観的に見つめる機会にもなります。「これは私たちも大切にしていることだ」「この工夫は取り入れられるかもしれない」。違いや共通点を知ることで、普段の診療の意味を確かめたり、新たな気づきを得たりできると感じました。
Harisとしても、今後こうした学びや交流の機会を皆さんと共有していきたいと考えています。海外の歯科医療を知る楽しさが、日々の仕事を見つめ直すきっかけになるような機会をお届けできればと思います。