更年期の口腔症状、唾液減少だけじゃない
今回参考にした論文は、Labunetらによる「Oral Manifestations in Menopause—A Scoping Review」(Medicina, 2025年)です。2019〜2024年の30件の研究から、更年期に関連する口腔の変化を整理しています。
閉経後には、唾液量が少ないという報告がある
この論文では、閉経後の女性で、閉経前の女性より唾液流量が少なかった研究が複数紹介されています。
唾液は、食べ物や細菌を洗い流し、酸を中和し、歯の再石灰化を助けています。分泌が少なくなると、これらの保護作用が弱まり、う蝕や口腔感染のリスクが高まります。

更年期と味覚の関係
Divya Harikaらは、歯科外来を受診した30〜60歳の女性60人を、閉経前と閉経後の各30人に分けて比較しました。
味覚は、甘味・塩味・酸味・苦味の溶液を5段階の濃度で口に含み、味を識別できるかを調べています。結果は、薄い濃度の甘味と苦味では閉経後のグループの識別率が低く、塩味と酸味には統計的に明確な差がありませんでした。
一方、この研究では閉経後のグループの唾液流量と血清亜鉛濃度は、どちらも正常範囲内でした。唾液量が正常範囲でも、味覚には差が見られたという結果です。濃い甘味は両グループの全員が識別できており、「甘味そのものが分からなくなる」という結果ではありません。

閉経前後と歯周組織の関係
Agrawalらは、歯周病科外来の40〜60歳の女性を対象に、閉経前後の歯周状態を比較しました。閉経後のグループでは、歯肉炎指数、歯周ポケットの深さ、臨床的アタッチメントロスが大きいと報告されています。

まとめ:更年期の口の変化を知ってもらい、状態に合わせて対応する
今回の論文では、更年期に関連して、唾液量の低下、味覚の変化、歯周病のリスクに関わる所見が報告されています。臨床では、更年期に入った患者さんに、こうした口の変化が起こりうることを知ってもらうことが大切です。全員に起こる変化として不安をあおるのではなく、気になることがあれば相談してもらえるように伝えます。
- 乾燥や唾液量の低下がある場合:こまめな水分補給や、口腔用の保湿剤・唾液代用剤で乾燥を和らげます。咀嚼に支障がなければ、シュガーレスガムなどで唾液の分泌を促す方法も検討します。保湿と唾液分泌を促す対応を、患者さんの状態に合わせて選びます。
- 味覚の変化がある場合:更年期や加齢に伴って味の感じ方が変わることもあると伝え、過度に不安を感じないよう支えます。味を感じにくいからといって、味付けを濃くしすぎないことにも気をつけてもらいます。変化が続く場合や食事に支障がある場合は、歯科医師に相談するよう案内します。
- 歯周病のリスクが高まっている場合:検査所見や清掃状態を確認し、歯科医師と相談して定期的なメインテナンスの間隔を短くするなどの対応を検討します。
体の変化を知ってもらい、それに合わせてケアや通院を調整することが、DHとしてできる支援です。
参考文献
Labunet A, et al. Oral Manifestations in Menopause—A Scoping Review. Medicina (Kaunas). 2025;61(5):837. doi:10.3390/medicina61050837
Divya Harika P, et al. Taste Changes and Salivary Flow Rate Disparities in Premenopausal and Postmenopausal Women: Exploring the Zinc Connection. Cureus. 2024;16(6):e62538. doi:10.7759/cureus.62538
Agrawal R, et al. Assessment of Periodontal Status in Pre- and Postmenopausal Women with Chronic Periodontitis: A Cross-Sectional Study. J Pharm Bioallied Sci. 2021;13(Suppl 2):S997–S999. doi:10.4103/jpbs.jpbs_145_21
American Dental Association. Xerostomia (Dry Mouth)(乾燥の評価・管理について参照)
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