ホワイトニング中の食事制限、白さへの上乗せ効果は確認されず
今回は、ホワイトニング期間中の歯の色の変化についてご紹介します。
今回参考にしたのは、Münchowらによる2025年のシステマティックレビュー・ネットワークメタ解析です。色の濃い飲食物を避ける「白い食事」をした場合と、制限しなかった場合などで、ホワイトニングによる色の変化を比較しています。[1]
食事を制限しても、歯の色の変化に有意な差はなかった
このレビューでは、7件の臨床研究(ランダム化比較試験4件、非ランダム化試験3件)をまとめています。白い食事の群と、コーヒー・紅茶・赤ワイン・コーラ・ブドウジュースなどに接触した群、または食事制限のない群を比較した結果、色の変化に統計的な有意差は認められませんでした。[1]
つまり、調べられた条件では、色の濃い飲食物を一律に控えることで、漂白効果がさらに高まるとは確認されなかったという結果です。著者らはエビデンスの確実性を「中程度」と評価しており、すべての飲食物・薬剤・患者さんで同じ結果を保証するものではありません。
個別の試験でも、45人に16%過酸化尿素によるホームホワイトニングを14日間行った2022年の研究では、食事制限の有無や赤ワインによる含嗽を比較し、歯の色の変化に群間の有意差はありませんでした。[2]
漂白と飲食物の着色は、歯の色に関わる別の変化
では、色の濃い飲食物に触れても、なぜ漂白効果に差が出なかったのでしょうか。結果を理解するには、ホワイトニングの仕組みと、飲食物による着色の仕組みを分けて考えると分かりやすくなります。
ホワイトニングでは、過酸化物が歯の中へ浸透し、色に関わる有機物に酸化反応を起こすことで、着色を淡くしていきます。一方、飲食物による外来性着色は、歯の表面や、唾液由来の薄い膜であるペリクルへの色素の付着・蓄積に関わります。[5]
歯の色に関わる、2つの変化
着色物質の化学構造が変わる
過酸化物は歯の内部にも作用し、
着色を淡くしていきます。
表面に新しい色素が付く
色素は歯の表面やペリクルに
付着・蓄積します。
口の中では、唾液や清掃、飲料に接する時間なども色素の残り方に関わります。歯を着色液に長時間浸す実験と、日常の飲食は同じ条件ではありません。[5][6]
こうした背景から、飲み物の色が濃いという理由だけでは、ホワイトニングでどの程度白くなるかを予測できません。ただし、今回の食事比較試験が測ったのは主に色の変化であり、「どの仕組みが群間差を小さくしたか」まで直接確認したわけではありません。
臨床では、白さ・しみる症状・その後の着色を分けて説明する
今回の結果からは、「白くする効果を高めるために、色の濃い飲食物を全員に一律で禁止する」という説明を、見直す余地があると考えられます。まずは、使用する製品の指示と院内の説明内容を確認し、食事制限を案内している目的を整理してみましょう。
その際、漂白効果の結果だけで「何を飲んでも大丈夫」と伝えないことが大切です。2020年のコーヒー・紅茶の試験では、全体の色差や白さの指標に群間差はなかった一方、治療終了3週後の明るさの変化(ΔL*)はコーヒー群で小さい結果でした。[3] また、2019年のコーラの非ランダム化試験では、終了30日後の色の変化に差がなくても、早い評価時点で知覚過敏の強さが高くなっていました。[4]
患者さんには、例えば次のように説明できます。
患者さんへの説明例「ホワイトニング中に色の濃い飲食物を控えることで、白くなる効果が高まるとは、今の臨床研究でははっきり示されていません。使用する製品の指示を確認しながら、無理のない食生活を考えていきましょう。しみる症状がある場合や、その後の着色が気になる場合は、別に確認して対応します。」
しみる症状がある方には、何を口にしたときに、どの程度、どれくらい続くのかを聞き取り、歯科医師と共有します。数か月・数年後の色の維持については今回の短期的な結果で判断せず、日頃の飲食習慣や清掃状況も確認し、メインテナンス時に着色を評価していきます。
まとめ:食事の色だけで決めず、目的に合わせた説明へ
ホワイトニング期間中に着色性の飲食物を一律に制限しても、白さへの上乗せ効果は確認されませんでした。漂白の仕組みを知ったうえで、白くなる効果、しみる症状、その後の着色を分けて考えることが、患者さんに合った説明につながります。
ご意見やご質問があれば、ぜひ気軽にコメントください。それでは、また次回〜!
参考文献
1. Münchow EA, et al. White diet is not necessary during dental bleaching treatment: A systematic review and network meta-analysis of clinical studies. Journal of Dentistry. 2025;153:105459. doi:10.1016/j.jdent.2024.105459 / PubMed
2. Influence of diet and red wine exposure on the velocity of at home bleaching: A randomized controlled clinical trial. 2022. PubMed PMID:35986934
3. Short-term effects of stain-causing beverages on tooth bleaching: A randomized controlled clinical trial. Journal of Dentistry. 2020;95:103318. doi:10.1016/j.jdent.2020.103318 / PubMed
4. Effects of Exposure to Cola-Based Soft Drink on Bleaching Effectiveness and Tooth Sensitivity of In-Office Bleaching: A Blind Clinical Trial. 2019. PMC全文
5. Carey CM. Tooth Whitening: What We Now Know. J Evid Based Dent Pract. 2014;14 Suppl:70–76. doi:10.1016/j.jebdp.2014.02.006 / PMC全文
6. Dawes C, et al. The functions of human saliva: A review sponsored by the World Workshop on Oral Medicine VI. Arch Oral Biol. 2015;60:863–874. doi:10.1016/j.archoralbio.2015.03.004
※歯科医療者向けの学習記事です。個別の診断・治療指示や、使用製品の指示に代わるものではありません。