う蝕予防で注目の3つの菌株:SD1・SP1・Bb12
今回は、う蝕予防のためのプロバイオティクスを取り上げます。健康に役立つ生きた微生物を利用して、口腔内の環境に働きかける方法です。
参考にしたのは、Inchingoloらの「The role of probiotics in preventing dental caries: a systematic review of clinical evidence」(Frontiers in Oral Health, 2025年)です。
この論文では、プロバイオティクスとう蝕予防に関する21件の研究をまとめ、どの菌が使われ、う蝕の発生や進行、口腔内の菌にどのような変化がみられたかを整理しています。
今回の論文で紹介されている3つの菌株
う蝕予防に役立つ可能性のあるプロバイオティクスとして、L. paracasei SD1、L. rhamnosus SP1、B. lactis Bb12が紹介されています。それぞれの研究で分かったことを、具体的に見ていきましょう。

1.L. paracasei SD1:う蝕の進行を抑える可能性
SD1は、子どものう蝕予防で研究されている菌株です。レビューでは、ミュータンス菌の減少と、唾液中で防御に働く抗菌ペプチドの増加が紹介されています。
同じ菌株の臨床試験を詳しく見ると、就学前の子ども487人を対象に、SD1入りのミルクを毎日、または週3日摂取する群と、通常のミルクの群を比較しています。6か月の摂取後、12か月まで追跡したところ、SD1を摂取した両群で、う蝕の進行が少なく、病変の改善も多い結果でした。菌だけでなく、実際の歯の変化まで評価されている点がポイントです。
2.L. rhamnosus SP1:う蝕の発症を抑える可能性
SP1では、う蝕リスクの高い2〜3歳の子ども261人を対象に、SP1入りのミルクと通常のミルクを10か月間比較した試験が紹介されています。
新たに穴のあいたう蝕ができた子どもの割合は、SP1群で9.7%、対照群で24.3%でした。この試験では、継続して摂取した子どもで、新しいう蝕の発生が少なかったことが示されています。う蝕予防への可能性を、具体的な臨床結果から説明できる菌株です。
3.B. lactis Bb12:う蝕に関わる菌を減らす方向へ
Bb12はビフィズス菌の一種です。レビューでは、初期う蝕のある学生がBb12入りのヨーグルトを摂取した試験で、唾液中のミュータンス菌と乳酸桿菌が減少したと紹介されています。口腔内の菌のバランスに働きかける候補として注目されています。
Bb12について、ここで紹介した結果は唾液中の菌の変化です。SD1やSP1のう蝕発生・進行の結果と分けて覚えると、患者さんに説明しやすくなります。
DHとして持ち帰りたいこと
「う蝕予防に役立つ菌の候補が、菌株名まで具体的になってきた」ことが、今回のレビューから得られる情報です。SD1とSP1ではう蝕の進行・発生、Bb12ではう蝕関連菌の減少という結果を押さえておきましょう。
患者さんから製品について聞かれたら、表示にある菌株名が、研究されたSD1・SP1・Bb12と一致するかを見るところから始められます。名前の末尾まで確認すると、研究と製品を結びつけて考えやすくなります。
患者さんへの説明例:「むし歯予防に役立つ可能性のある菌が研究されています。特にSD1やSP1では、子どものむし歯の進行や新たな発生が少なかった結果があります。フッ化物や歯みがきに加える方法として、研究が進んでいます。」
各菌株を同じ条件で直接比べた順位ではなく、主に子ども・若年者の個別試験を整理したものです。効果の大きさや摂取方法は、その試験の条件と合わせて読む必要があります。
参考文献
Inchingolo AD, et al. The role of probiotics in preventing dental caries: a systematic review of clinical evidence. Front Oral Health. 2025;6:1720036. 原著レビュー
- Piwat S, et al. Caries Res. 2020;54:491–501(SD1)。論文を読む
- Rodríguez G, et al. J Dent Res. 2016;95:402–407(SP1)。論文を読む
- Zare Javid A, et al. Caries Res. 2020;54:68–74(Bb12)。論文を読む
菌名は紹介論文の表記に合わせています。