オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)の歯周治療への効果
近年、オメガ3脂肪酸の歯周治療への効果について、さまざまな報告が出ています。そこで今回は、オメガ3脂肪酸が歯周治療に与える効果について、現状わかっていることを解説します。
歯周病の改善が報告された研究
Deoreらの2014年の論文では、全身的に健康な非喫煙者の中等度〜重度歯周炎患者60人を対象にしました。両群にSRPを実施し、一方にはEPA 180mg+DHA 120mg/日(以下、オメガ3群)、もう一方にはプラセボを12週間追加しました。
オメガ3群はPDや歯肉の炎症・出血の指標で改善が大きく、12週目のCALも対照群より良好でした。一方、血中CRP(血液中の炎症マーカー)には有意な群間差がありませんでした。[1]
なぜオメガ3脂肪酸が歯周治療に効果があると言われているのか
歯周炎では、細菌に対する炎症反応が長引くことで、歯周組織の破壊につながります。EPA・DHAは細胞膜に取り込まれ、炎症に関わる物質を作る際に使われる脂肪酸の組成に影響します。たとえば、アラキドン酸から作られるプロスタグランジンやロイコトリエンなどの産生に影響することが知られています。こうした炎症に関わる物質の産生に影響し、炎症反応を調整する働きが期待されています。[3]
もう一つ、炎症収束の仕組みとして研究されているのが、炎症を「終わらせる」働きです。EPA・DHAは、レゾルビンやプロテクチンなど、炎症の収束に関わる物質の材料になります。これらの物質が好中球の過剰な集積を抑えたり、マクロファージによる死んだ細胞などの片付けを促したりすることが示されています。単に炎症を抑えるだけでなく、炎症が収まり、歯周組織が落ち着いた状態へ戻る過程を支えるという考え方です。[5]

ただし、一部の指標のみ改善が報告された研究もある
2023年の研究では、ステージIII・IV歯周炎患者50人を対象にSRPを行い、片方の群にはEPA・DHAを含む魚油20mL/日を6か月追加しました(以下、魚油群)。この魚油にはEPA 2.6g、DHA 1.8gのほか、別の脂質成分やビタミンも含まれています。
3か月のCAL改善量は魚油群1.32mm、対照群0.83mmで、有意差がありました(p=0.01)。一方、平均PDの変化には、3か月・6か月とも有意な群間差がありませんでした。両群ともPDは改善しており、「PDが改善しなかった」のではなく、魚油追加による平均PDの上乗せ改善が明確ではなかったという結果でした。CALなど一部の指標では短期の改善効果が認められても、すべての指標で同じ結果になるとは限らないことが示されています。[2]
なぜ改善の結果が分かれるのか

患者さんの歯周炎のステージやグレード、喫煙、全身状態などは、治療への反応を考えるうえで重要な背景です。EPA・DHAを追加した場合の効果にも、こうした背景が関係する可能性があります。また、EPA・DHAの摂取量や配合比率、製剤の違いが結果に影響している可能性も考えられます。
まとめ
EPA・DHAは、SRPに追加することで歯周治療の改善を補助する可能性があります。一方で、効果はすべての評価項目で一貫しているわけではなく、患者さんの歯周病の状態、全身疾患、生活習慣、服用薬を踏まえて考える必要があります。
適切な摂取量やEPA・DHAの配合比率は、まだ確立していません。「この量より少ないと効かない」という基準もなく、多く摂れば効果が高まるというわけでもありません。2023年の研究では吐き気や魚臭い口臭が報告され、NIHも胃腸症状などの副作用や薬剤との相互作用に注意を促しています。[2,3]
参考文献
- Deore GD, et al. Omega 3 fatty acids as a host modulator in chronic periodontitis patients. 2014.
- Stańdo-Retecka M, et al. Clinical and microbiological outcomes of subgingival instrumentation supplemented with high-dose omega-3 polyunsaturated fatty acids in periodontal treatment. 2023.
- NIH Office of Dietary Supplements. Omega-3 Fatty Acids: Health Professional Fact Sheet.
- Hasturk H, et al. Resolvin E1 regulates inflammation at the cellular and tissue level and restores tissue homeostasis in vivo. J Immunol. 2007;179:7021–7029.
- Schwab JM, et al. Resolvin E1 and protectin D1 activate inflammation-resolution programmes. Nature. 2007;447:869–874.
それでは、また次回〜🦷✨