歯がグラグラ=歯周病が進行中?──動揺度が本当に映しているもの
動揺度をチェックしながら「これって進行サイン?噛み合わせ?」と迷ったことはありませんか。同じ揺れでも裏側で起きていることは別物。動揺度の意味を機序から読み解きます。
今回参考にした書籍は『Carranza’s Clinical Periodontology』です。歯の動揺度(tooth mobility)が何を映し出しているのか、その成り立ちと評価について整理されています。
リコールのたびに動揺度をチェックしながら、「この揺れって、歯周病が進んでいるサイン?それとも噛み合わせのせい?」と迷ったこと、ありませんか?同じ「Millerの2度」でも、その裏側で起きていることはまったく違うことがあります。
そもそも、歯はなぜ「少し」揺れるのが正常なの?
まず押さえておきたいのが、健康な歯にも、ごくわずかな生理的動揺があるということです。
歯は骨に直接くっついているわけではなく、歯根膜(PDL)という線維のクッションを介して歯槽骨に吊られています。この歯根膜のしなりがあるおかげで、噛む力が一点に集中せず、骨へ分散されます。
つまり、わずかな揺れは「異常」ではなく、力を受け止めるための仕組みそのもの。問題になるのは、この生理的範囲を超えて揺れが大きくなったときです。
動揺が大きくなる「2つの経路」を分けて考える
動揺度が増す背景には、大きく分けて2つの経路があります。ここを混同すると、評価も対応もぶれてしまいます。
①支える骨が減るパターン(付着の喪失)
歯周炎が進むと歯槽骨が吸収し、歯根が骨に埋まっている割合(クラウン・ルート比)が悪化します。支点が根尖側に下がるほど、てこの原理で歯冠側の揺れは大きくなります。これは「土台そのものが減った」動揺です。
②歯根膜が広がるパターン(咬合性外傷)
過剰な咬合力が繰り返し加わると、歯根膜のスペースが代償的に広がり、揺れが増えます。エックス線で歯根膜腔の拡大として見えることがあります。ただしこの場合、付着(アタッチメント)は失われていないことが多いのがポイントです。
同じ「揺れている」でも、①は不可逆の土台減少、②は力を調整すれば改善しうる反応——と、意味がまるで違います。
ただし、「揺れている=進行中」とは限らない
ここで注意したいのが、動揺度そのものは「現在の進行度」を直接は表さないという点です。
たとえば、過去に大きく骨を失ったあと炎症が落ち着いた歯は、付着が回復しなくても動揺が一定で安定していることがあります。揺れていても「進んでいる」のではなく「すでに減った状態で止まっている」ケースです。
一方で、動揺が回を追うごとに増えている(進行性の動揺)場合は、炎症のコントロール不良や咬合の問題が続いているサインとして、より注意が必要になります。
だからこそ、1回の数値より経時的な変化を記録して追うことに意味があるのではないでしょうか。
まとめ:動揺度を「記録する」ときに意識したいこと
・生理的動揺は正常。問題はその範囲を超えた揺れ
・「骨が減った(付着喪失)」のか「歯根膜が広がった(咬合性外傷)」のかを分けて考える
・BOP・PD・CAL・エックス線所見とセットで解釈する
・1回の値で判断せず、変化(増えているか/安定か)を記録で追う
動揺度を「ただ数字を書く欄」ではなく、その歯に何が起きているかを読み解く手がかりとして記録できると、再評価やメインテナンスの判断が一段深まるのではないでしょうか。
参考文献
Carranza’s Clinical Periodontology 13th ed. Newman MG et al. Elsevier (2019)
Lindhe J, et al. Clinical Periodontology and Implant Dentistry. Wiley-Blackwell.
それでは、また次回〜🦷✨