SPTは「3ヶ月ごと」でいいの?──リスク評価で決まる、患者別メインテナンス間隔の考え方
「なんとなく3ヶ月」で決めていませんか?歯周病リスクの高低によって適切な間隔は変わります。その根拠と判断基準を、患者さんごとに考えるための視点で整理します。
「この患者さん、3ヶ月後でいいですか?」──先輩DHにそう聞かれてとっさに「はい」と答えてしまったことはないでしょうか。気づけば全員一律3ヶ月刻みになっていて、その根拠を問われたら「えっと……標準的なので」と言いよどんでしまう。でも本当は、この「間隔の設定」こそ、SPT管理の核心部分なんです。
「3ヶ月」は万能ではない
SPT(Supportive Periodontal Therapy)の間隔について、国際的なコンセンサスが示しているのは「リスクに応じて個別化する」という考え方です。Axelssonら(2004年)の30年追跡研究では、定期的なメインテナンスが歯周病の再発と歯牙喪失を劇的に抑制することが示されましたが、その「定期的」の間隔は一律ではありませんでした。
欧州歯周病学会(EFP)の2020年版SPTガイドラインでは、リスク評価に基づいた個別の間隔設定を推奨しています。具体的には低リスク患者:6〜12ヶ月、中リスク:3〜6ヶ月、高リスク:1〜3ヶ月という目安が示されています。
リスク評価の判断材料:何を見るか
ではリスクをどう判断するか。臨床でよく使われるのがLang & Tonomaが提唱したPeriodontal Risk Assessment(PRA)モデルです。以下の6因子をスパイダーグラフで視覚化します。
①BOP(%)──出血部位が多いほど炎症が残存している証拠。BOPが20%以下に落ち着いていれば比較的安定。
②残存ポケット数(PPD 5mm以上)──深いポケットは細菌の温床。4本以上残存すると再発リスクが高まる。
③歯牙喪失数──過去に失った歯が多いほど、疾患の既往リスクを示す。
④骨喪失/年齢比──(骨喪失%)÷(年齢)で求める指数。0.5以下:低リスク、0.5〜1.0:中リスク、1.0以上:高リスクの目安。
⑤全身疾患・喫煙──糖尿病HbA1c値、喫煙本数・期間。これらは宿主応答を低下させ、細菌に有利な環境を作る。
⑥プラークコントロール──PCR(プラークコントロールレコード)が25%以下なら協力性良好。それ以上は患者指導継続が必要。
間隔が「長すぎる」と何が起きるか──機序から理解する
バイオフィルムは口腔内で約2〜3週間で成熟します。成熟バイオフィルムは抗菌薬にも免疫にも抵抗性が高い「多糖体マトリクス(EPS)」に覆われ、機械的除去が唯一の有効手段になります。専門的なクリーニングをしない期間が長くなると、歯肉縁下のバイオフィルムが再成熟し、再び炎症誘発因子を放出し始めます。
高リスク患者でこれを放置すれば、3〜6ヶ月でBOP再上昇、PPDの再拡大が起きうる。逆に低リスク患者に毎月呼び出せば負担・費用ともに過剰です。「根拠のある間隔設定」はつまり、患者の炎症コントロール能力と細菌の再繁殖スピードの釣り合いを見極めることなんです。
明日の臨床で使える考え方
実際のSPTでは毎回「今の間隔は適切か?」を再評価する視点が大切です。BOP%が前回より上昇している、新たなPPD 5mm以上が出現している──そういったサインは「間隔を短縮するサイン」として捉えましょう。逆に複数回の連続評価で安定していれば、間隔を1ヶ月延ばすことを提案できます。
患者さんへの説明も変わります。「3ヶ月後に来てください」ではなく「あなたは今リスクが落ち着いているので6ヶ月でいきましょう、ただし次回のBOPで判断します」という一言が、患者さんの自己管理意識を高め、信頼にもつながります。
「全員3ヶ月」から卒業して、リスク評価に基づいた個別間隔設定ができるDHになること──それが治療効果を上げると同時に、あなた自身の臨床の質を底上げする鍵になります。一緒に考えていきましょう🦷
参考文献
Axelsson P, Nyström B, Lindhe J. The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. J Clin Periodontol. 2004;31(9):749-757.
Lang NP, Tonetti MS. Periodontal risk assessment (PRA) for patients in supportive periodontal therapy (SPT). Oral Health Prev Dent. 2003;1(1):7-16.