歯周病の新分類、ステージとグレード──「今の状態」と「これからのリスク」を分けて考える
カルテの「ステージⅢ グレードB」、なんとなく流していませんか。2018年の新分類で「慢性/侵襲性」がなくなった理由と、ステージ(重症度)・グレード(進行リスク)の2軸を、DHの記録とメンテナンス設計に結びつけて整理します。
今回参考にしたのは、2017年のWorld Workshopから生まれた歯周炎の新分類、Tonetti・Greenwell・Kornmanによる「Staging and grading of periodontitis」(2018年)です。
カルテに「ステージⅢ グレードB」と書かれていて、正直なんとなく流していた……と感じたことはありませんか。DHにとっては、実はいちばん日常業務に直結する分類かもしれません。
「慢性」「侵襲性」がなくなった
まず大きな変化として、以前の「慢性歯周炎」「侵襲性歯周炎」という区分が廃止されました。両者を明確に線引きできる病態的な根拠が乏しかったためです。代わりに導入されたのが、ステージ(重症度と治療の複雑さ)とグレード(進行のリスク)という2軸です。がんの分類に似た考え方で、「今どのくらい進んでいるか」と「これからどのくらい進みそうか」を分けて表します。
ステージは「今の状態」
ステージⅠ〜Ⅳは、主に歯間部の臨床的アタッチメントロス(CAL:歯肉退縮量+ポケット深さで表される付着の喪失量)と骨吸収の程度で決まります。そこに、歯の喪失本数や根分岐部病変・咬合崩壊といった「治療の複雑さ」を加えて最終的なステージが決まります。ポイントは、ステージは治療で下がらないということです。失われた付着は戻らないので、一度ステージⅢになった方はステージⅢのまま管理していくことになります。
グレードは「これからのリスク」
グレードA・B・Cは、進行の速さを表します。基準になるのは骨吸収量と年齢の比で、年齢のわりに骨が減っていればグレードは上がります。さらに、喫煙や血糖コントロール不良(HbA1c)はグレードを上げる修飾因子として扱われます。つまり、同じステージⅢでも、非喫煙・血糖良好の方と、喫煙者で糖尿病がコントロールできていない方ではグレードが変わってきます。ここはまさに、DHが問診と指導で関われる部分ではないでしょうか。
ただし、分類は万能ではない
この分類は「その時点の情報でつける」ものであり、過去のX線写真がなければグレードの判定は間接的な推定にとどまります。一方で、判定に迷う症例ではグレードBを起点として、リスク因子があれば引き上げるという考え方が示されており、迷ったときの拠り所になります。分類はラベル貼りではなく、メンテナンス間隔や指導の力点を決めるための道具です。「ステージⅢグレードCだから、リコールは短めに、禁煙支援を優先しよう」——そんな会話ができると、日々の記録が一気に意味を持ってくるかもしれません。
参考文献
Tonetti MS, Greenwell H, Kornman KS. Staging and grading of periodontitis: framework and proposal of a new classification and case definition. J Clin Periodontol. 2018;45(Suppl 20):S149-S161.
Papapanou PN, Sanz M, Buduneli N, et al. Periodontitis: consensus report of workgroup 2 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions. J Clin Periodontol. 2018;45(Suppl 20):S162-S170.
それでは、また次回〜🦷✨