砂糖は「量」より「頻度」?──ステファンカーブでわかる、う蝕リスクの本当の物差し
「そんなに甘いもの食べてないのに、なんでむし歯?」その答えのカギは砂糖の「量」ではなく「頻度」かもしれません。ステファンカーブと臨界pH5.5・再石灰化の20〜30分から、明日から使える食生活指導のコツを整理します。
今回整理するのは、う蝕リスクと砂糖の「とり方」の関係、いわゆるステファンカーブの話です。ステファンカーブとは、飲食のあとに口の中のpH(酸性・中性の度合い)がどう変化するかを示した曲線のことです。患者さんに「そんなに甘いもの食べてないのに、なんでむし歯になるの?」と言われて、うまく説明できなかったこと、ありませんか?
「量」ではなく「回数」で歯は溶ける
食事や間食をとると、プラーク中の細菌が糖を分解して酸をつくり、口の中のpHが下がります。エナメル質が溶けはじめる境目は、おおよそpH5.5とされています(臨界pH)。砂糖を含むものを口にすると、数分でこの5.5を下回り、歯の表面から脱灰(ミネラルが溶け出すこと)が始まります。
その後、唾液が酸を中和・希釈し、溶けたミネラルを戻す再石灰化が働きます。ただしこの回復には、およそ20〜30分かかるとされています。つまり、飲食の回数が多いほど、口の中が酸性に傾く時間が積み重なり、再石灰化が追いつかなくなる、というわけです。
同じ量のお菓子でも、一度に食べきる場合と、少しずつだらだら食べる場合とでは、酸にさらされる時間がまったく違ってきます。「量」ではなく「回数と時間」で歯は溶ける、と言い換えてもよいのではないでしょうか。
ただし、量や種類を無視してよいわけではない
ここで注意したいのが、「回数さえ少なければ、いくら食べてもいい」というわけではないという点です。一度の摂取量が多ければ、それだけ酸の産生量も増えますし、砂糖の種類や停滞しやすさ(キャラメルやグミなど歯に残りやすいもの)もリスクに関わります。
一方で、頻度に着目することの強みは、患者さんが取り組みやすいことです。「甘いものを全部やめて」より、「ちょこちょこ食べ・だらだら飲みを見直そう」のほうが、行動に移してもらいやすいのではないでしょうか。「何を食べるか」だけでなく「どう食べるか」を、一緒に見直していきたいですね。
まとめ:どう活かす?
① 気づき方(問診・観察)
食事記録や問診で「間食・甘い飲み物の回数」を必ず聞く/目安は1日の酸性攻撃4〜5回まで。3食+間食1〜2回を超えていないか/ペットボトルのジュース・スポーツドリンク・カフェラテを「少しずつ長時間」飲む習慣は要注意(=だらだら飲み)。
② 患者さんへの声かけ例
「食べる量より、お口が酸性になる“回数”が歯には影響するんです」「同じ1個のチョコでも、一気に食べるのと、少しずつ食べるのでは歯への負担が全然違いますよ」「飲むなら食事のときに一緒に。だらだら飲みだけ、まず見直してみませんか?」
③ 具体的な提案
間食は時間と回数を決めて「まとめて」とる/水分補給は基本、水かお茶に/食後の再石灰化を助ける意味で、フッ化物配合歯磨剤の活用も併せて伝える。
④ DHにできること/線引き
私たちにできるのは、頻度という「視点」を提供し、実行可能な小さな一歩を一緒に決めること。食事指導は栄養管理そのものではないので、糖尿病など全身疾患が絡む食事制限は主治医・管理栄養士の領域と心得ます。頻度という物差しを持っておくと、食生活指導がぐっと具体的になるのではないでしょうか。
参考文献
- Stephan RM. Intra-oral hydrogen-ion concentrations associated with dental caries activity. J Dent Res. 1944;23(4):257-266.(糖を摂取した後にプラークpHが低下する「ステファンカーブ」を示した原著。臨界pHの概念的基盤)
- Gustafsson BE, Quensel CE, Lanke LS, et al. The Vipeholm dental caries study: the effect of different levels of carbohydrate intake on caries activity in 436 individuals observed for five years. Acta Odontol Scand. 1954;11(3-4):232-264.(糖をとる「頻度」がう蝕を増やすことを示した古典的コホート)
※臨界pH5.5、および再石灰化に要する時間(20〜30分)は、カリオロジーの標準的な知見に基づいています。
それでは、また次回〜🦷✨