削らないう蝕管理、どこまで待てる?──ICDASの段階評価とADAの非切削治療
初期う蝕を「様子を見ましょう」と言われたとき、何をどこまで見ればよいのか迷う場面があります。ICDASによる0〜6の段階評価と、ADAガイドラインが推奨する非切削治療、そして「削らない」が「何もしない」ではない理由をDHの視点で整理します。
今回参考にした論文は、ICDASとICCMSを解説したPittsらの論文、う蝕組織除去に関する国際コンセンサス(う蝕をどこまで削るかについて世界の専門家がまとめた提言)、そしてADA(米国歯科医師会)の非切削治療ガイドラインです。
う蝕は「有無」ではなく「段階」
Pittsらは、ICDAS(International Caries Detection and Assessment System)を用いて、う蝕を0〜6のコードで段階的に記録する枠組みを示しています。目安は次の通りです。
- コード0:健全(変化なし)
- コード1〜2:エナメル質表面だけの白濁・変色(実質欠損はない)
- コード3〜4:エナメル質のごく小さな欠損、または象牙質の変化が透けて見える段階(まだ明らかなう窩ではない)
- コード5〜6:象牙質まで達した、目に見えるう窩がある段階(歯冠の半分未満か以上かで5と6に分かれる)
エナメル質表面のわずかな白濁も、象牙質まで達した空洞も、ひとくくりにはできません。段階を記録しておくことで、次回「進んだのか、止まっているのか」を具体的に比較できます。
非切削で止めるという選択肢
Slaytonらによる米国歯科医師会(ADA)の診療ガイドラインは、非空洞化病変に対してシーラントやフッ化物バーニッシュなどの非切削治療で病変の進行を停止させることを推奨しています。
修復は一度始めると、再修復を繰り返すサイクルに入りやすいことが知られています。
Schwendickeらによる国際コンセンサス(う蝕をどこまで削るかについて世界の専門家がまとめた提言)でも、この修復のサイクルにできるだけ入らないことが基本方針として示されています。
ただし、待てない場面もある
ただし、「削らない」は「何もしない」ではありません。
非切削管理が成立する前提は、バイオフィルムが患者さん自身と術者によって継続的に除去できることです。
一方で、清掃不可能な空洞化病変や、シールできない形態になった病変では、修復的介入が適応になるとされています。
活動性の判断も難しく、記録がなければ「止まっている」とは言えません。
ここを曖昧にしたまま経過観察にすると、静かに進行させてしまうかもしれません。
DHにできること
ICDASコードの変化(進んだか止まっているか)、白濁や着色の範囲、表面のザラつきや軟らかさ、フッ化物の使用状況や間食の頻度といった項目を、毎回同じ物差しで記録することができます。
前回と比べてコードも見た目も変わっていなければ、それ自体が「止まっている」という立派な所見です。変化がないことを記録できて初めて、次回も同じ方針で経過を見てよいと判断できます。
「前回と比べてどうか」を持ち込めるのは、継続して同じ患者さんを見ているDHの強みです。
ご意見やご質問があれば、ぜひコメントで教えてください。
それでは、また次回〜🦷✨
参考文献Pitts NB, Ekstrand KR. International Caries Detection and Assessment System (ICDAS) and its International Caries Classification and Management System (ICCMS) – methods for staging of the caries process and enabling dentists to manage caries. Community Dent Oral Epidemiol. 2013;41(1):e41-e52.
Schwendicke F, Frencken JE, Bjørndal L, et al. Managing carious lesions: consensus recommendations on carious tissue removal. Adv Dent Res. 2016;28(2):58-67.
Slayton RL, Urquhart O, Araujo MWB, et al. Evidence-based clinical practice guideline on nonrestorative treatments for carious lesions: a report from the American Dental Association. J Am Dent Assoc. 2018;149(10):837-849.