う蝕リスクは唾液のタンパク質で見える?
唾液中のタンパク質とう蝕の関係を調べた21件の研究、2,000人以上のデータをまとめたシステマティックレビューを紹介します。IgAやα-アミラーゼなど18種類のタンパク質を比べたところ、う蝕のない人で濃度が高いもの、う蝕のある人で濃度が高いものがそれぞれ確認されました。ただし研究ごとのばらつきが大きく、唾液検査だけでう蝕リスクを確定できる段階ではないという点まで含めて整理しています。
今回参考にした論文は、López-GalindoとAtashkadehによる「Exploring potential salivary biomarkers for dental caries: a systematic review」(Medicina Oral Patología Oral y Cirugia Bucal, 2025年)です。
この論文では、2013年から2023年までに発表された、唾液中のタンパク質とう蝕の関係を調べた21件の観察研究をまとめて分析しています。
2,000人超のデータ、18種のタンパク質を比較
このレビューには、6歳から89歳までの2,000人以上を対象にした21件の研究(コホート研究2件、症例対照研究2件、横断研究17件)が含まれており、次の18種類の唾液タンパク質が調べられています。
ムチン(粘液の主成分)、プロリンリッチタンパク質(PRP)、カテリシジン(LL-37)、免疫グロブリンA(IgA、唾液中の免疫にかかわるタンパク質)、スタセリン、総タンパク質、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、プロテイナーゼ3(PR3)、α-アミラーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ(CAIV)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン(IL)、β-ディフェンシン(HBD)、sCD-14、バスタチン、YKL-40、APRP(酸性プロリンリッチタンパク質)の18種類です。
対象者のうち54%がう蝕のある人、46%がう蝕のない人でした。
結果を見てみると、5件の研究のうち4件で、う蝕のない人のほうが唾液中のIgA濃度が高いという結果でした。また、同じくう蝕のない人でα-アミラーゼ、プロテイナーゼ3、ムチン、スタセリンの濃度が高い傾向が見られました。
一方で、YKL-40、APRP、SOD、MMP-8、sCD-14は、う蝕のある人のほうが濃度が高いという報告が複数ありました。総タンパク質についても、4件の研究のうち3件で、う蝕のある人のほうが濃度が高いという結果が出ています。
今回の調査から、唾液中のタンパク質を調べることで、視診だけでは分かりにくいう蝕のなりやすさを見分けられる可能性が示されています。
ただし、まだ臨床に応用できる段階ではない
一方で、この論文では、研究ごとに調べているタンパク質の種類がばらばらで、結果にも研究間で違いが大きいことが指摘されています。
そのため、「唾液検査でう蝕リスクが確定する」という段階には、まだ至っていないと考えられそうです。
まとめ:今の臨床でどう位置づける?
- う蝕リスクの評価は → 唾液の緩衝能や問診など、これまでの方法を軸にする
- 唾液バイオマーカー検査は → 将来的にリスク評価を補強する選択肢のひとつとして知っておく
- 患者さんに説明するときは → 「唾液の性質もう蝕のなりやすさに関わっている」という話として伝える
唾液を使った検査は、まだ発展途上の分野です。一方で、MTM(メディカルトリートメントモデル)のように唾液検査を用いたう蝕管理は今後の歯科治療のスタンダートとして活躍する可能性を秘めていそうです。
参考文献
López-Galindo M, Atashkadeh W. Exploring potential salivary biomarkers for dental caries: a systematic review. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2025;30(6):e849-e856.(唾液タンパク質とう蝕の関連を21研究でまとめたシステマティックレビュー)
ご意見やご質問があれば、ぜひ気軽にコメントください。
それでは、また次回〜!