超音波スケーラーと手用キュレット、どっちが効く?──臨床成績・処置時間・到達性で考える使い分け
「先輩は手用派、自分は超音波派」。系統的レビューやRCTを見ると、臨床成績に大きな差は示されていません。差が出るのは処置時間と到達性。優劣ではなく部位ごとの使い分けとして整理します。
今回参考にしたのは、機械的(超音波・音波)デブライドメントと手用器具を比較したTunkelらの系統的レビュー(2002年)と、その後のランダム化比較試験・メタ分析です。
「先輩は手用派、自分は超音波派」で、どちらが正しいのか分からないまま来てしまった……と感じることはありませんか?感覚の話にしないために、比較試験が何を言っているのかを見てみます。
臨床成績には、大きな差が出にくい
Tunkelらの系統的レビューでは、慢性歯周炎の治療において、単根歯では超音波/音波デブライドメントと手用器具のあいだに明確な差は認められなかったと報告されています。
その後のランダム化比較試験(Ioannouら、2009年)でも、PPD(probing pocket depth:プロービングポケット深さ)の減少やCAL(臨床的アタッチメントレベル)の獲得、細菌学的な指標において、両者に大きな違いは示されませんでした。
ポケット深さ別に解析したメタ分析(Zhangら、2020年)でも、同様に臨床パラメータの明確な優劣は示されていません。
つまり、「どちらでもきちんとやれば結果は似る」というのが現時点でのまとめ方になりそうです。
では、何が違うのか
差が出るのは、臨床成績よりも処置時間と術者・患者の負担です。Tunkelらのレビューでも、超音波/音波器具のほうが手用器具より処置時間が短いことが示されています。Ioannouらの試験でも同様に、超音波のほうが短時間で終わったと報告されています。
術者の手指への負担という点でも、超音波は現実的な選択肢といえるでしょう。一方で、手用キュレットには触知感(タクタイルセンス)という大きな利点があります。歯石の取り残しや根面の粗さを指先で確認できるのは、超音波では代えがたい情報です。
ただし、部位によって話は変わる
ただし、これらの比較の多くは単根歯を中心としたデータです。根分岐部や、根面の陥凹(フルーティング)がある部位では、器具の到達性そのものが問題になります。
細いチップを持つ超音波は狭い部位への到達性に優れ、手用キュレットは平坦な根面での面での除去に向いています。だとすれば、どちらかを選ぶというより、部位ごとに持ち替えるのが現実的なのではないでしょうか。
- 広い根面・触知確認 → 手用キュレット
- 深いポケット・根分岐部・全顎の効率 → 超音波(細径チップ)
- 仕上げの確認 → エキスプローラーで触知
まとめ
超音波か手用かは、優劣の問題ではなく使い分けの問題と考えられそうです。大事なのは器具の種類ではなく、「その部位に到達できているか」「取り残していないか」。道具選びで悩む時間より、到達性と確認に時間を使うほうが、結果につながるのかもしれません。
それでは、また次回〜🦷✨
参考文献Tunkel J, Heinecke A, Flemmig TF. A systematic review of efficacy of machine-driven and manual subgingival debridement in the treatment of chronic periodontitis. J Clin Periodontol. 2002;29(Suppl 3):72-81.
Ioannou I, Dimitriadis N, Papadimitriou K, et al. Hand instrumentation versus ultrasonic debridement in the treatment of chronic periodontitis: a randomized clinical and microbiological trial. J Clin Periodontol. 2009;36(2):132-141.
Zhang X, Hu Z, Zhu X, et al. Treating periodontitis—a systematic review and meta-analysis comparing ultrasonic and manual subgingival scaling at different probing pocket depths. BMC Oral Health. 2020;20(1):176.