顎骨壊死(MRONJ)、DHが見るべきサイン──「8週間治らない」に最初に気づく
問診票の「骨粗鬆症の薬を飲んでいます」に、何を見て、何を伝えますか。AAOMS2022を軸に、顎骨壊死(MRONJ)の初期サインと、DHにできることを整理します。
今回参考にした論文は、AAOMSのMRONJポジションペーパー2022年版(Ruggieroら)、予防的歯科管理の効果を示したRipamontiらの報告(2009)、そして歯科衛生士向けにまとめられたイタリアのポジションペーパー(Mauceriら, 2022)です。
問診票に「骨粗鬆症の薬を飲んでいます」と書かれていた場合、どのような対応が必要でしょうか。
顎骨壊死の定義は「治らないこと」が軸
AAOMSの2022年版ポジションペーパーでは、MRONJの柱として、骨吸収抑制薬や血管新生阻害薬の使用歴があること、顎への放射線照射歴がないこと、そして8週間以上治らない骨露出、または口腔内外の瘻孔から骨が探知できる状態が挙げられています。
裏を返すと、「治らない」を最初に気づける立場にいるのがDHなのではないでしょうか。抜歯後の経過も、義歯による潰瘍も、フォローしているのはメインテナンスの現場です。
DHが見るべきサイン
学会の指針や臨床報告で繰り返し挙がるのは、次のような所見です。
- 骨の露出、粘膜の潰瘍が長く治らない
- 瘻孔、排膿、腫脹
- 説明のつかない歯の動揺
- 下唇やオトガイ部のしびれ
- 義歯があたる部位の潰瘍が改善しない
好発部位は下顎で、骨隆起や顎舌骨筋線のように粘膜が薄く骨が突出している部位は特に注意が要りそうです。
口腔衛生管理には意味がありそう
Ripamontiらは、ミラノの国立がん研究所でビスホスホネート開始前の歯科評価と処置を導入したところ、ONJの発生が3.2%から1.3%へ減少したと報告しています。ゾレドロン酸を投与された患者に限ると、7.8%から1.7%(P=0.016)という差でした。局所の感染源を減らすこと自体に、意味がありそうだと考えられます。
DHの役割はここ
DHができるのは、服薬内容を問診で拾い、担当医と共有することです。そして、プラークコントロールで局所の感染源を減らし、義歯の適合を確認して粘膜に傷を作らないこと。「その潰瘍、いつからですか」を毎回聞いて記録するだけでも、顎骨壊死の判定に役立つ情報になるかもしれません。
参考文献
・Ruggiero SL, Dodson TB, Aghaloo T, et al. American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons' position paper on medication-related osteonecrosis of the jaws—2022 update. J Oral Maxillofac Surg. 2022;80(5):920-943.
・Ripamonti CI, Maniezzo M, Campa T, et al. Decreased occurrence of osteonecrosis of the jaw after implementation of dental preventive measures in solid tumour patients with bone metastases treated with bisphosphonates. Ann Oncol. 2009;20(1):137-145.
・Mauceri R, Coniglio R, Abbinante A, et al. The preventive care of medication-related osteonecrosis of the jaw (MRONJ): a position paper by Italian experts for dental hygienists. Support Care Cancer. 2022;30(8):6429-6440.
ご意見やご質問があれば、ぜひコメントで教えてください。それでは、また次回〜🦷✨