抗血栓薬、SRPで休薬は必要?──「継続+局所止血」が原則という整理
「念のため休薬してもらいましょうか」に迷いはありませんか。抜歯のメタ分析では抗凝固薬を継続しても出血はほぼ増えず、原則は「休薬しない+局所止血」。例外にあたるケースと、当日DHにできることを整理します。
今回参考にした論文は、抜歯時の抗凝固薬継続を検討したメタ分析(Yangら, 2016)、抗血小板薬服用者の抜歯後出血をまとめた系統的レビュー・メタ分析(AlAgilら, 2024)、そしてSDCEPの指針(2022)です。
「サラサラの薬、SRPの前に止めてもらったほうがいいですか」——そんな相談に、迷わず答えられるでしょうか。抜歯やSRPのたびに休薬を検討する慣習が残る一方で、エビデンスは少し違う方向を示しています。
「継続しても出血は増えなかった」というデータ
Yangらのメタ分析は、抜歯を受ける患者さんを対象に、抗凝固薬を飲み続けたグループと、休薬したグループを比較しています。結果は、出血の起こりやすさに大きな差はなかったというものでした。
抗血小板薬についても、AlAgilらの系統的レビュー・メタ分析で、アスピリンだけを飲んでいる患者さんと、飲んでいない人との間で、抜歯直後の出血の頻度に大きな差はなかったと報告されています。
SDCEP(スコットランドの歯科臨床有効性プログラム。英国の歯科治療指針を作っている公的機関です)の指針も、抗凝固薬・抗血小板薬を服用する患者さんの歯科治療について、原則として休薬せずに行い、圧迫や縫合といった局所的な処置で止血する方向を示しています。
なぜ「休薬しない」が原則なのか
休薬でいちばん怖いのは、出血ではなく血栓側のイベントだからです。歯科の出血は圧迫、縫合、止血材といった局所処置でコントロールできる範囲にあることが多い一方、脳梗塞や心筋梗塞は取り返しがつきません。天秤にかけたときのリスクの重さが違う、という整理なのだと考えられそうです。
ただし、全部が同じではありません
ただし、AlAgilらの解析では、アスピリン以外の薬を単独で飲んでいる患者さんは、抜歯直後の出血が明らかに多かったと報告されています。一方で、2種類の薬を併用している患者さんも、出血が続きやすいグループとして注意が必要だとされています。
休薬の是非より、当日の進め方
「念のため休薬してもらったほうが」という気持ちが浮かぶかもしれませんが、データを踏まえると、実際に休薬するかどうかよりも、当日どう進めるかのほうがより重要と考えられます。
DHができるのは、服薬内容と、最終のINR(血液の固まりやすさを示す数値で、ワルファリンなどの血液を薄める薬の効き具合を確認する際に使われます)の確認状況を、問診で正確に拾うことです。そして、SRPであれば一度に全顎を触らず範囲を分割する、器具の当て方を丁寧にする、圧迫止血の時間をきちんと取る、術後に「強くうがいをしない」「その日は運動と飲酒を控える」と伝える。
地味ですが、この積み重ねが「休薬しなくても大丈夫だった」を支えているのかもしれません。休薬の是非そのものより、当日の丁寧な進め方に目を向けてみませんか。
参考文献
・Yang S, Shi Q, Liu J, Li J, Xu J. Should oral anticoagulant therapy be continued during dental extraction? A meta-analysis. BMC Oral Health. 2016;16(1):81.
・AlAgil J, AlDaamah Z, Khan A, Omar O. Risk of postoperative bleeding after dental extraction in patients on antiplatelet therapy: systematic review and meta-analysis. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2024;137(3):224-242.
・Scottish Dental Clinical Effectiveness Programme. Management of dental patients taking anticoagulants or antiplatelet drugs, 2nd edition. 2022.
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