オーラルフレイルはOF-5で見分ける──「特に変わりない」の裏にある、拾えるサイン
「お変わりないですか」「特には」——その会話の裏に、拾えるサインがあります。柏スタディではオーラルフレイル該当者は死亡リスク2.2倍。OF-5の5項目のうち2つ以上で判定する見方と、問診で使える具体的な質問を整理します。
今回参考にした論文は、柏スタディの縦断研究(Tanakaら, 2018)、日本老年歯科医学会の口腔機能低下症に関するポジションペーパー(Minakuchiら, 2018)、そして3学会合同のオーラルフレイルに関する合意(Tanakaら, 2024)です。
「お変わりないですか」「特には」——問診でよくあるこのやり取りの裏に、実は拾えるサインが隠れていることがあります。オーラルフレイルという言葉は広まりましたが、「何を見て、何を拾えばいいのか」は現場ごとにばらつきがあるのではないでしょうか。
柏スタディが示した、オーラルフレイルとその後のリスク
Tanakaらは、65歳以上の地域在住高齢者を対象に追跡調査(柏スタディ)を行いました。調査を始めた時点でオーラルフレイルに該当したのは16%でした。
その人たちはその後、身体的フレイル2.4倍、サルコペニア(筋肉量や筋力が落ちること)2.2倍、要介護状態2.3倍、そして死亡2.2倍のリスクだったと報告されています。見ていたのは「重い飲み込みの障害」ではなく、噛める食品の減少や滑舌といった手前の変化だった点がポイントです。
OF-5:2024年に定まった5項目の基準
柏スタディで使われた判定基準はその後見直され、2024年に日本老年医学会・日本老年歯科医学会・日本サルコペニア・フレイル学会の3学会合同で「OF-5」という5項目の基準が示されました。次の5項目のうち、2項目以上に該当する状態をオーラルフレイルとします。
- 歯の数が少ない
- 噛みにくい
- 飲み込みにくい
- 口の乾き
- 滑舌の低下
このOF-5の基準では、地域在住高齢者のおよそ40%が該当するとされています。柏スタディの16%とは調査時期も判定基準も異なるため、同じ集団の割合として単純に比較はできません。ただし、いずれの基準でも、重い症状が出る前の段階を拾おうとしている点は共通しています。
さらに一段医療寄りの評価として、日本老年歯科医学会は口腔機能低下症の7項目(口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下)を示しています。
ただし、因果関係とは言い切れません
これらは「オーラルフレイルを治せば死亡率が下がる」ことを直接証明したものではありません。全身の衰えが先にあって、その結果として口腔機能が落ちている(逆の向き)可能性も残ります。介入によって予後まで改善するかどうかは、まだ検証の途中と考えたほうが誠実かもしれません。
現場でDHが拾えること
前回からの変化を聞いても「特に変わりない」の一言で会話が終わってしまう場面は、多くの現場であるのではないでしょうか。実際には、噛める食品が減っていたり、むせが増えていたりしても、患者さん自身がそれを「変化」として意識していないことがあります。
DHができるのは、こうした変化の兆しを言葉にして拾い、記録し、必要なら担当医につなぐことです。
「最近、食べにくくなったものはありますか」
「お茶や汁物でむせることは増えていませんか」
「お薬は飲み込みにくくないですか」
体重や食事内容の変化を一緒に聞いておくと、次の来院時に比べられます。歯石を取ることと同じくらい、この数分の問診に価値があるのではないでしょうか。
それでは、また次回〜🦷✨
参考文献Tanaka T, Takahashi K, Hirano H, et al. Oral frailty as a risk factor for physical frailty and mortality in community-dwelling elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018;73(12):1661-1667.
Tanaka T, Hirano H, Ikebe K, et al. Consensus statement on "oral frailty" from the Japan Geriatrics Society, the Japanese Society of Gerodontology, and the Japanese Association on Sarcopenia and Frailty. Geriatr Gerontol Int. 2024;24(11):1111-1119.
Minakuchi S, Tsuga K, Ikebe K, et al. Oral hypofunction in the older population: position paper of the Japanese Society of Gerodontology in 2016. Gerodontology. 2018;35(4):317-324.