義歯性口内炎、原因はカンジダだけ?──義歯プラーク・夜間装着・適合不良が重なる多因子
義歯下のきれいな発赤、「カンジダですね」で片付けていませんか。義歯性口内炎の有病率は15%〜70%超で、義歯プラーク・夜間の継続装着・適合不良による粘膜の傷が重なって起こるとされています。就寝時装着で肺炎リスクが2.38倍という報告も踏まえ、DHにできる問診と記録のポイントを整理します。
今回参考にした論文は、義歯性口内炎の疫学と成因をまとめた総説(Gendreau & Loewy, 2011)、就寝時の義歯装着と肺炎の関連を調べた前向き研究(Iinumaら, 2015)、そして義歯清掃法のコクラン・レビュー(de Souzaら, 2009)です。
「カンジダ」だけでは説明しきれない
Gendreau & Loewyの総説によると、義歯装着者における義歯性口内炎の有病率は15%から70%超と幅広く報告されています。
そして成因として挙げられているのは、カンジダだけではありません。
- 義歯清掃の不良と義歯プラークの蓄積
- 義歯表面の細菌・酵母の汚染
- 昼夜を通した継続装着(とくに夜間装着)
- 適合不良による粘膜への機械的な刺激
つまり、微生物と行動と補綴の適合が重なった結果として捉えるほうが、実態に近いのかもしれません。多くは自覚症状に乏しく、痛みがないから患者さんも訴えません。だからこそ、外して見る習慣が要ります。
夜間の取り扱いが、要因の一つ
Iinumaらは、85歳以上の地域在住高齢者を3年間追跡しました。
その結果、就寝時に義歯を装着していた人は、外していた人に比べて、肺炎になった割合が2.38倍多かったと報告されています。さらに、就寝時に装着していた群では、舌苔や義歯プラーク、歯肉の炎症、カンジダ菌の検出、血液中の炎症を示す数値の上昇もより多く認められたと報告されています。
「夜は外して、洗って、乾かす(または水中保管する)」という当たり前の指導に、根拠がありそうです。
ただし、清掃法の優劣はまだ決着していません
ただし、de Souzaらのコクラン・レビューでは、義歯清掃法どうしを比較した質の高い研究が乏しく、どの方法が最も優れているかは結論できないとされています。
ブラッシングや化学的清掃がプラセボよりプラーク量や微生物数を減らしたという報告はあるものの、決定版とまでは言えません。一方で、「何で洗うか」より「毎日外して洗うかどうか」のほうが、現場では効きやすいのではないでしょうか。
明日からの一言と、拾っておきたい変化
義歯下の発赤を見つけても、「様子を見ましょう」で終わってしまう場面は少なくないかもしれません。
DHができるのは、必ず義歯を外して粘膜を見ること、義歯の内面を見ること、清掃方法と夜間の扱いを具体的に聞くことです。
「夜はどうされていますか」
「義歯用のブラシは使っていますか。歯磨剤で磨いていませんか」
「洗浄剤に浸けたあと、水で流していますか」
そして、赤みが義歯の外形とぴったり一致しているか、痛みや味覚の変化はないかを記録して残しておく。細かい日々の様子を観察することで粘膜異常の解消につながります。
ご意見やご質問があれば、ぜひコメントで教えてください。
それでは、また次回〜🦷✨
参考文献Gendreau L, Loewy ZG. Epidemiology and etiology of denture stomatitis. J Prosthodont. 2011;20(4):251-260.
Iinuma T, Arai Y, Abe Y, et al. Denture wearing during sleep doubles the risk of pneumonia in the very elderly. J Dent Res. 2015;94(3 Suppl):28S-36S.
de Souza RF, de Freitas Oliveira Paranhos H, Lovato da Silva CH, et al. Interventions for cleaning dentures in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2009;(4):CD007395.