矯正中のホワイトスポット、何が効く?──「4人に1人」という前提と、フッ化物・ブラシ選択のエビデンス
矯正治療中に新たな白斑ができる患者さんは約25%と報告されています。フッ化物の追加応用はCochraneレビューで「有益の示唆はあるが確実性は低い」、電動と手用の歯ブラシにも差は示されていません。装着初日からDHにできることを整理します。
今回参考にした論文は、固定式矯正装置装着中の脱灰予防に関するCochraneレビュー(世界中の研究を集めて偏りが少ない方法でまとめた総説)と、矯正患者さんのブラッシング法を比較した系統的レビュー、そして白斑の発生頻度を調べた観察研究です。
白斑は、めずらしくない
Julienらの報告では、矯正治療中に新たな白斑(ホワイトスポット)が生じた患者さんは約25%とされています。4人に1人という割合です。
まれな合併症ではなく、装置がついた時点で起こりうるものとして見込んでおいてよい変化なのだと思います。
フッ化物は「効きそう」だが、確実性は低い
BensonらのCochraneレビューは、固定式装置の装着中に行うフッ化物応用(高濃度歯磨剤・洗口液・バーニッシュ・フッ化物徐放性の材料など)を検討しています。
結論は、高濃度フッ化物歯磨剤やバーニッシュに有益な方向の示唆はあるものの、エビデンスの確実性は低いというものでした。
ここでいう「確実性が低い」は、効果がないという意味ではありません。研究の数や質、結果のばらつきから判断して、今後の研究で結論が変わる可能性が残っているという評価です。「効かない」ではなく「まだ言い切れない」と読むのが近いと思います。
そのため、どの方法がいちばん優れているかまでは、現時点では決められません。
電動か、手用か
ElShehabyらの系統的レビュー・メタ分析(複数の研究の数値をまとめて統計的に検討したもの)では、固定式装置を装着中の患者さんで電動歯ブラシと手用歯ブラシを比較しています。
4週間後・8週間後のどちらの時点でも、プラーク指数と歯肉炎指数に統計学的な差は認められませんでした。プラーク指数は付着したプラークの量、歯肉炎指数は歯肉の炎症の程度を、それぞれ点数にした指標です。
どちらを使うかよりも、リスクの高い部位に毛先が届いているかどうかのほうが、結果を左右しているのかもしれません。
DHにできること
ブラケット周囲の白斑は、気づいたときにはすでに範囲が広がっていた、ということが起こりやすい変化です。だからこそ、装置を装着したその日から関われる余地があります。
具体的には、次のようなことができると思います。
- 装着初日に「装置の周りは白く濁りやすい場所です」とリスクを言葉にして伝える
- ブラケットの歯肉側・翼部の周囲など、毛先が届きにくい部位を鏡で一緒に確認する
- フッ化物の使い方(濃度・タイミング・すすぎ方)を、患者さんが再現できる手順まで落とす
- 白濁の位置と範囲を毎回同じ物差しで記録し、前回と比べて変わっていないかを見る
「ここが白くなり始めています」と早い段階で気づいて記録し、次回につなぐこと。変化がないことを記録できて初めて、止まっていると判断できます。
毎回同じ患者さんを見て、前回との差を持ち込めるのは、DHの強みなのだと思います。
ご意見やご質問があれば、ぜひコメントで教えてください。
それでは、また次回〜🦷✨
参考文献Benson PE, Parkin N, Dyer F, et al. Fluorides for preventing early tooth decay (demineralised lesions) during fixed brace treatment. Cochrane Database Syst Rev. 2019;11(11):CD003809.
ElShehaby M, Mofti B, Montasser MA, Bearn D. Powered vs manual tooth brushing in patients with fixed orthodontic appliances: a systematic review and meta-analysis. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2020;158(5):639-649.
Julien KC, Buschang PH, Campbell PM. Prevalence of white spot lesion formation during orthodontic treatment. Angle Orthod. 2013;83(4):641-647.