誤嚥性肺炎の「発症」と「再発」、口腔で見るべきポイント
脳卒中の既往がある高齢患者559名を対象にした研究から、誤嚥性肺炎の「発症」と「再発」に関わる口腔の要因を整理します。発症には口の中の汚れ、再発には食事の摂取レベルの低さが関係しており、防ぎたい場面によって観察すべきポイントが変わることがわかりました。
今回参考にした論文は、Hombo Aほかによる「Aspiration Pneumonia Incidence and Recurrence in Elderly Stroke Patients: Oral Hygiene and Functional Status」(International Dental Journal, 2025)です。この研究では、脳卒中の既往がある高齢患者559名を対象に、誤嚥性肺炎の「発症」と「再発」がそれぞれ口腔のどのような状態と関連しているかを調べています。
559名を「発症の有無」と「再発の有無」で分けて調べた研究
脳卒中のあとは飲み込みの働きが低下しやすく、誤嚥性肺炎は命に関わる合併症のひとつです。口の中の汚れが高齢者の誤嚥性肺炎に関係することはこれまでも知られていましたが、脳卒中患者に絞って詳しく調べた研究は多くありませんでした。
対象は、2013年から2017年に嚥下機能の評価を受けた高齢患者のうち、脳卒中の既往がある559名です。
- 誤嚥性肺炎を起こした177名と、起こさなかった382名を比較
- 肺炎を起こした人はさらに、再発がなかった人と繰り返した人に分けて分析
診察時には、次の2種類の項目を評価しています。
- 口腔の汚れ:粘り気のある分泌物、膜のような付着物、口の乾き、舌苔、粘膜の炎症、食べかすの残り
- 口腔機能:よだれの有無、かむ力を支える歯や義歯の有無、食べ物をまとめる力、食事の摂取レベル
口の汚れは誤嚥性肺炎の「発症」に、飲み込む力は「再発」に関係していた
結果を見ると、「発症」と「再発」で関係する要因が違っていました。
誤嚥性肺炎の「発症」に関係していたもの
- 口の中の膜のような付着物、食べかすの残り(なかでも食べかすの残りが発症と最も強く結びついていた)
- かむ力を支える歯や義歯の有無
誤嚥性肺炎の「再発」に関係していたもの
- 食事の摂取レベルの低さ(摂取レベルが低い人は、そうでない人よりおよそ3倍再発しやすい)
- 食べかすの残りは単純に比べると関係が見られたが、他の要因も含めて調べ直すと結びつきは弱くなった
つまり、最初の発症を防ぐには口の中をきれいに保つことが、繰り返しを防ぐには飲み込みや食べる力そのものを支えることが、それぞれ鍵になってくるのではないでしょうか。
現場でどう活かす?
脳卒中の既往がある患者さんや、寝たきり・要介護の患者さんの口腔ケアでは、次のような視点を取り入れてみると変化に気づきやすくなります。
- 「清掃良好」「不良」のざっくりした記録だけでなく、食べかすが残っている場所や膜のような付着物の有無まで具体的にメモする
- 口腔ケア中のよだれの量、飲み込みにかかる時間、むせやすさなど、飲み込みに関わるサインも記録しておく
- こうした気づきは看護・リハビリなど他職種と共有できる形にしておくと、発症を防ぐケアと再発を防ぐケアを分けて考えるきっかけになる
- 食べ物をまとめる力や飲み込む力に不安がある患者さんには、口腔機能を意識したトレーニングを日々のケアに取り入れることも選択肢のひとつ
おわりに
「口の中をきれいにすること」と「飲み込む力を支えること」は、どちらも誤嚥性肺炎の予防につながりますが、目的が少し違うのだと分かる研究でした。目の前の患者さんが防ぎたい「発症」なのか「再発」なのかを意識するだけでも、ケアの視点が変わってきそうです。
参考文献
Hombo A, Kato K, Jokaji-Ishimiya M, et al. Aspiration Pneumonia Incidence and Recurrence in Elderly Stroke Patients: Oral Hygiene and Functional Status. Int Dent J. 2025;75(6):103902.(脳卒中高齢患者の誤嚥性肺炎の発症・再発と口腔の状態との関連を調べた原著論文)
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それでは、また次回〜!