歯周炎と糖尿病の血管リスク
糖尿病患者における歯周炎と血管合併症の関連を調べた7つの研究、合計29,679人分のデータをまとめた報告を紹介します。歯周炎がある糖尿病患者は脳梗塞や心筋梗塞、網膜症・腎症・神経障害といった血管合併症を起こしやすい傾向が示されており、歯周炎が重いほどそのリスクも高まることがわかりました。
今回参考にした論文は、Musaieほかによる「Effects of periodontitis on micro and macro vascular complications of diabetes: A systematic review」(Journal of Advanced Periodontology and Implant Dentistry, 2025)です。糖尿病患者における歯周炎と、網膜症・腎症・神経障害などの細小血管合併症、心筋梗塞・脳梗塞などの大血管合併症との関連を調べた7つの研究、合計29,679人分のデータがまとめられています。
重度の歯周炎がある人ほど血管合併症が多かった
糖尿病が進行すると、網膜・腎臓・神経といった細い血管がダメージを受ける「細小血管合併症」と、心臓や脳の太い血管がダメージを受ける「大血管合併症」の両方が起こることが知られています。また、同じく歯周炎も全身の慢性炎症を通じてこれらの血管に影響している可能性が以前から指摘されてきました。今回まとめられた研究により、次のような傾向が報告されています。
- 歯周炎がある糖尿病患者はない人に比べて脳梗塞や心筋梗塞を起こす割合がやや高く、特に脳梗塞は2割ほど高くなる傾向。
- 歯周炎がある人は、細小血管合併症(網膜症・腎症・神経障害)を起こしやすい傾向。
- 歯周炎が重いほど細小血管合併症の数が多く、HbA1cが8.0%以上の人ほど重度の歯周炎を持つ割合が高い。
- 重度の歯周炎や歯の喪失が神経障害と関連し、むし歯が多い人ほど脳梗塞のリスクも高い一方、1日2回以上歯みがきをしている人では心筋梗塞・脳梗塞の発症が少ない傾向。
上記の報告から、歯周炎による慢性的な炎症が血糖コントロールの乱れや血管の内側の傷みにつながり、糖尿病の血管合併症を後押ししている可能性が考察されています。
現場でどう活かす?
今回の内容は、臨床では次のような形で活かせそうです。
- 問診では、HbA1cの値や、網膜症・腎症・神経障害・心血管疾患といった合併症の有無を意識して聞き取る。
- 歯周ポケットの深さや出血、歯の喪失本数を記録に残し、次回来院時との変化から悪化のサインに早く気づけるようにする。
- 全身疾患のリスクがある患者さんにTBIでは、「歯みがきの回数を増やすことが、将来の脳梗塞や心筋梗塞のリスクにもつながるかもしれない」という視点を持ち、ブラッシング指導の声かけに厚みを持たせる。
- 患者さんから「歯周病と糖尿病って関係あるの?」と聞かれたときは、こうした研究を根拠に、口の中のケアが全身の血管の健康にもつながっていることを自分の言葉で伝える。
おわりに
歯周炎と糖尿病、そして血管疾患のつながりは、まだすべてが解明されているわけではありませんが、口の中を整えることが全身の血管の健康にもつながっている可能性は、日々の診療に向き合う励みになりますね。
参考文献
Musaie F, Garousi S, Shahrokhi M, et al. Effects of periodontitis on micro and macro vascular complications of diabetes: A systematic review. J Adv Periodontol Implant Dent. 2025;18(1):48-54.(歯周炎と糖尿病の血管合併症との関連を、複数の研究をまとめて検討した報告)
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