歯科が怖い患者さん、どう向き合う?──DASとMDASで「怖い」を数値化する視点
「歯医者が怖い」という患者さんへの対応に、根拠のある型はあるのでしょうか。Corahが1969年に発表したDAS(4項目)と、局所麻酔への不安を加えた5項目のMDASという評価尺度、そして行動的アプローチの効果を示す系統的レビューをもとに整理します。
今回参考にした論文は、歯科不安尺度(DAS)の原典、修正版であるMDASの検証論文、そして成人の歯科不安に対する心理的治療の系統的レビューです。
歯科恐怖症の患者さんへどのようにアプローチしたらいいか迷うことはありませんか?
「怖い」は測れる
半世紀以上前から、歯科不安は主観ではなく数値として扱われてきました。Corahは1969年に、歯科受診への不安を4つの質問で測るDental Anxiety Scale(DAS)を発表しました。
そのDASに局所麻酔の注射に対する不安の項目を加えて5項目にしたのが、Humphrisらの修正版歯科不安尺度(MDAS)です。
注射こそが最大の恐怖という患者さんは多く、元のMDASではその点についても数値化することができます。
歯科恐怖症を数値化し、対策する
尺度の価値は、点数そのものより「共有できる」ことにあるのではないでしょうか。
「怖がりな人」という印象ではなく、「この項目が高い人」として引き継げます。
歯科医師にも、次回担当するDHにも、同じ言葉で伝わります。
行動的アプローチには効果あり
Wide Bomanらの系統的レビューでは、認知行動療法を含む行Wide Bomanらの系統的レビューでは、歯科恐怖症がある成人を対象に、曝露療法(怖いと感じる場面に少しずつ慣れていく方法)、系統的脱感作(軽い不安から強い不安へ段階を踏んで慣らす方法)、リラクゼーション法(呼吸法や筋弛緩法で緊張をゆるめる方法)といった行動的なアプローチの効果がまとめて検討されました。
結果として、これらの行動的アプローチは歯科不安の低減に効果を示しました。ただし、対象となった研究数は限られており、研究の作り方にも偏りがあるため、まだ強く言い切れる段階ではありません。
一方で、「効果が証明しきれていない」ことと「やる意味がない」ことは別です。このやり方は、特別な訓練を受けていなくても日常の診療の中で取り入れられます。
- 処置の前に、これから何をするかを説明してから触れる
- 「つらいときはこの合図で教えてください」と、合図を決めておく
- 一度に長くやりすぎず、短時間で区切る
こうした関わり方の積み重ねが、その患者さんにとって安心できる診療につながるかもしれません。
DHにできること
患者さんに「歯科恐怖症なんです」と言われたときにどうしたらいいか迷うかもしれません。
そんな時は、尺度を使って不安を数値化し、記録として残し、有効なアプローチを用いて接することが重要です。
「痛くないですよ」ではなく「どの場面が一番つらいですか」と聞くこと。
必要に応じて、数値化し、院内でその患者情報を正確に共有することで、歯科恐怖症を抱える患者さんに対しても適切な対応ができるようになるのではないでしょうか。
参考文献
Corah NL. Development of a dental anxiety scale. J Dent Res. 1969;48(4):596.(DASが4項目の尺度として開発されたことを支える)
Humphris GM, Morrison T, Lindsay SJE. The Modified Dental Anxiety Scale: validation and United Kingdom norms. Community Dent Health. 1995;12(3):143-150.(MDASが注射項目を加えた5項目であることを支える)
Wide Boman U, Carlsson V, Westin M, Hakeberg M. Psychological treatment of dental anxiety among adults: a systematic review. Eur J Oral Sci. 2013;121(3 Pt 2):225-234.(行動的アプローチの効果とエビデンスの質の低さを支える)
それでは、また次回〜🦷✨