PPDが浅くなった=治った?CALが本当の進行を映す理由
同じ4mmでも「進行している4mm」と「治っている4mm」がある——。PPDとCALの違いを機序から理解し、見かけの改善に惑わされない記録を。
今回参考にしたのは、米国歯周病学会(AAP)・欧州歯周病連盟(EFP)による2017年の歯周炎分類と、『Clinical Periodontology and Implant Dentistry』(Lindhe)です。歯周炎の重症度を測る軸として、ポケット深さ(PPD)よりも臨床的アタッチメントレベル(CAL)が重視される理由が整理されています。
プロービングの数値を記録するとき、PPD(Probing Pocket Depth=ポケットの深さ)だけを見て「4mm、前回より浅くなった、改善したな」と判断していませんか?でも、同じ4mmの中に「進行している4mm」と「治っている4mm」が混ざっているとしたら——。今回はその落とし穴を、機序からひもといてみます。
PPDが同じでも、状態は正反対のことがある
PPDは「歯肉辺縁(マージン)からポケット底まで」の距離です。ここで見落としがちなのが、基準点である歯肉辺縁そのものが動くという事実です。
炎症で歯肉が腫れてマージンが歯冠側(上)にせり出すと、付着は失われていなくてもPPDは深く出ます。これが仮性ポケット(偽ポケット)です。逆に、歯肉が退縮してマージンが下がると、付着が失われていてもPPDは浅く出ます。
つまり、PPDは「付着の喪失量」ではなく「マージンの位置」に強く左右される指標なのです。「浅くなった=治った」と即断できない理由はここにあります。
CALはなぜ「本当の進行」を映すのか
一方でCAL(Clinical Attachment Level=臨床的アタッチメントレベル)は、CEJ(セメント-エナメル境)からポケット底までの距離で測ります。
ポイントは、CEJが炎症や腫れで動かない固定ランドマークだということ。歯肉が腫れようと退縮しようとCEJの位置は変わりません。だからCALは、結合組織性付着とセメント質が破壊された累積量——歯周炎がこれまでに歯を支える組織をどれだけ失わせたか——をそのまま反映します。
計算としては、マージンがCEJより根尖側(退縮あり)ならCAL=PPD+歯肉退縮量、マージンがCEJより歯冠側(腫脹あり)ならCAL=PPD−(CEJからマージンまでの距離)になります。同じPPD4mmでも、2mm退縮していればCALは6mm。付着の喪失は確実に進んでいる、と読めるわけです。
ただし、CALにも測定の難しさがある
ここで注意したいのが、CALは万能ではないということです。
基準点であるCEJを正確に触知するのは、実は簡単ではありません。歯石の沈着、修復物のマージン、くさび状欠損、知覚過敏のある部位では、CEJの位置が曖昧になりやすく、再現性はPPD単独より低くなることが知られています。
だからこそ、CALは一回の絶対値より「経時的な変化(ΔCAL)」で見るのが基本です。同じ術者・同じ部位で追いかけ、BOPやエックス線所見と合わせて総合的に判断する。これが現実的な使い方になりそうです。
まとめ:明日からの記録をどう変える?
難しく聞こえますが、やることはシンプルです。
・PPDだけでなくマージンの位置(退縮量や腫脹)も一緒に記録し、CALを把握する
・「PPDが浅くなった」をすぐに改善と決めつけない(退縮による見かけ上の改善かもしれない)
・本当の安定はCALが横ばい〜回復しているかで評価する
・患者さんには「数字が浅くなった理由が、治ったからなのか、歯ぐきが下がったからなのかを見分けています」と伝える
参考文献
Tonetti MS, Greenwell H, Kornman KS. Staging and grading of periodontitis. J Clin Periodontol / J Periodontol 89(S1) (2018)
Lindhe J ほか. Clinical Periodontology and Implant Dentistry. Wiley-Blackwell
天野敦雄「21世紀のペリオドントロジー ダイジェスト」クインテッセンス出版(2015)
それでは、また次回〜🦷✨