動機づけ面接で変わる、ホームケアへの前向きさ
歯科衛生士による短時間の動機づけ面接(MI)と、従来型の口腔衛生指導を比較したミネソタ大学の研究を紹介します。MI群では「習慣を維持できる自信」が面接前より高まった一方、従来型の指導群では下がっていたことが報告されています。明日から取り入れられる声かけの型もあわせて整理しました。
今回参考にした論文は、Arnettらによる「Effectiveness of brief motivational interviewing on perceived importance, interest and self-efficacy of oral health behaviors: A randomized clinical trial」(PEC Innovation, 2022)です。ミネソタ大学歯学部で、メインテナンス中の患者58名を対象に、歯科衛生士が行う短時間の動機づけ面接(MI)と、従来型の口腔衛生指導を比較しています。
メインテナンス患者58名を対象にした比較研究
対象は、メインテナンスに1年以上通っている18歳以上の患者です。プラークスコアが高め、出血が見られる部位が複数あるなど、ホームケアの見直しが必要な方たちでした。
参加者は2グループに分かれ、面接前後のアンケートで変化を比較しています。
- 歯科衛生士による短時間の動機づけ面接を受けるグループ
- 従来どおりの口腔衛生指導を受けるグループ
動機づけ面接(Motivational Interviewing: MI)は、対話を通じて相手の「変わりたい」という内発的な動機を引き出し、自発的な行動変容を促すための協働的で共感的なコミュニケーション手法です。元々は依存症治療から発展しましたが、現在では歯科・医療・保健指導など幅広い分野で用いられています。
最大の特徴は、従来の「〇〇すべきです」といった一方的な指導や説得(正論の押し付け)を行わない点です。相手の価値観や現状の葛藤を受け止め、相手自身が「変える必要性」に気づき、行動を起こす決意をするようにサポートします。
今回の研究で比較したのは、次の3つの変化です。
- ホームケアの「大切さ」をどう感じているか
- 「変えること」への関心
- 「自分にはできる」という自信(自己効力感)
「自分にはできる」という自信が、MI群のほうが高まった
面接後のアンケートでは、MI群のほうが従来型の指導群より、ホームケアを変える意欲や、長期的に新しい習慣を維持できるという自信の伸びが大きく見られました。特に印象的だったのは、次の点です。
- 従来型の指導群では「習慣を維持できる自信」が面接前より下がっていた
- MI群では逆に上がっていた
- MI群の患者は「担当の歯科衛生士が自分の口腔の状態に関心を持ってくれた」「自分の目標を後押ししてくれた」という項目に、最も高い評価をつけていた
面接の中でよく使われていた技法は、「アファメーション(患者さんの長所、努力、強み、これまでの成功体験などをしっかり認め、言葉にして伝える技法)」と「聞き返し(相手の言葉やその背後にある感情を鏡のように反射させ、言葉にして返すコミュニケーション技法)」です。そこに「少しお話をうかがってもいいですか」と一言断ってから話す「アスキング・パーミッション(アドバイスや情報提供を行ったり、特定の話題(ホームケアの指導など)に入ったりする前に、まず患者さんに「話してもよいか」の許可を求める技法)」を組み合わせたときに、特に反応が良かったと報告されています。一方的に指導するより、まず一言断って、話を引き出しながら関わるほうが、患者さん自身の「変えられそう」という感覚につながりやすいのではないでしょうか。
現場でどう活かす?
明日から取り入れられそうなのは、次のような一往復のやりとりです。
- いつものホームケア指導の前に、「今日は少しホームケアについてお話ししてもいいですか」と一言断りを入れる
- 「今のブラッシングで、うまくいっていると感じる部分はありますか」といった開かれた質問で、患者さん自身に話してもらう
- 出てきた言葉を「〜と感じていらっしゃるんですね」と聞き返して認める
アドバイスを並べるより先に、この一往復を挟むだけでも会話の温度は変わってきそうです。顔なじみの患者さんほど一方的な指導に流れやすいからこそ、意識して問いかけを増やしてみる価値がありそうです。
おわりに
「言っても変わらない」と感じてしまう場面があっても、伝え方を少し変えるだけで、患者さんの中の「やってみよう」という気持ちは動くのかもしれません。次のメインテナンスで、まず一言問いかけから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
Arnett MC, Rogers KM, Evans MD, et al. Effectiveness of brief motivational interviewing on perceived importance, interest and self-efficacy of oral health behaviors: a randomized clinical trial. PEC Innov. 2022;1:100092.(歯科衛生士による短時間の動機づけ面接が、患者のホームケアへの前向きさと自己効力感を高めたことを示す比較試験)
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