前歯や小臼歯は普通に取れるのに、上顎大臼歯になった途端に手が止まる。同じ患者さんでも先輩が触ると涼しい顔で取れているのに、自分が担当した側だけ次の来院でまた歯石が残っている──そんな差に落ち込んだこと、ありませんか?
この「いつも同じ場所で取り残す」には、実は腕より先に歯の形そのものに理由があります。上顎大臼歯は3根を持つ最も複雑な形態の一つ。どこに何があるかを先に理解しておくだけで、アプローチの精度はかなり変わってきます。
上顎大臼歯の3根の特徴
上顎大臼歯は通常近心頬側根・遠心頬側根・口蓋根の3根を持ちます。根分岐部の開口部は頬側・近心・遠心の3か所に存在します。
・近心頬側根内側面には94%の割合で根面溝が存在(Bower, 1979)→ プラークと歯石が溜まりやすく、インスツルメンテーションの最難関部位
・口蓋根は3根の中で最も長く、中央部に縦溝が認められることがある
・ルートトランク(歯頸から根分岐部まで)の長さが短いほど早期に根分岐部が露出しやすい
バイファーケーションリッジと根間突起
バイファーケーションリッジ:根と根をつなぐように隆起した部位。上顎ではY字状に約70%の頻度で認められる。
根間突起(エナメルプロジェクション):エナメル質が根分岐部に侵入した突起。結合組織性の付着がないため剥がれやすく、歯周ポケット形成リスクが高い。
3根を個別に考えるとイメージしやすい
複雑に見える3根も個別に見ると理解しやすくなります。口蓋根は犬歯(卵形断面)、遠心頬側根は切歯(円形・凹凸が少ない)、近心頬側根は第一小臼歯(凹みが大きい)にそれぞれ似た形態を持ちます。
臨床でどう活かす?上顎大臼歯を担当する前に、エックス線写真で根の形態・骨吸収の程度を確認し、ファーケーションプローブで根分岐部病変の程度を評価してからインスツルメンテーションを計画しましょう。
参考:小森朋栄ほか「歯科衛生士のためのインスツルメンテーション」ヒョーロン(2014)
それでは、また次回〜🦷✨