その歯肉退縮、ブラッシング圧のせい?──系統的レビューが出せていない「因果」と、多因子で考える視点
「磨きすぎで下がりましたね」とつい言っていませんか? 実は系統的レビューでは、ブラッシングと歯肉退縮の因果は支持も否定もできていません。断定を手放し、多因子で考える視点を一緒に整理します。
今回参考にしたのは、Rajapakse らの系統的レビュー(2007年)と、Heasman らの系統的レビュー(2015年)です。
「歯ぐきが下がってきたのは磨きすぎですね」と、つい言ってしまったことはありませんか?
系統的レビューの結論
Rajapakse らは、6つのデータベースを検索してブラッシングと非炎症性歯肉退縮の関連を調べました。非炎症性歯肉退縮とは、明らかな歯周炎の炎症によらずに歯肉が根尖側へ下がる状態のことです。結論は、関連を支持することも否定することもできないというものでした。その8年後、Heasman らが同じテーマで系統的レビューを行っています。こちらでも、外傷性ブラッシングが歯肉退縮や楔状欠損を引き起こすという確かな根拠は得られませんでした。つまり、私たちが日常的に口にしている説明は、実はエビデンスとしては固まっていないということになります。
ただし、「関係ない」とも言えません
これは「ブラッシングは歯肉退縮と無関係」という意味ではありません。十分な質と量の研究がないため判断できない、というのが正確な読み方です。一方で、Heasman らのレビューでは、手用歯ブラシと電動歯ブラシを比べた解析で、12か月後の退縮が手用でやや大きかったという結果も報告されています。電動歯ブラシは一定の振動で力を分散しやすく、圧力センサー搭載機種も多い一方、手用は圧のコントロールを使用者に委ねるため、強い圧がかかりやすい点が背景として述べられていました。この結果から、力のコントロールが関わっている可能性は否定できないと考えられそうです。
では、何を見ればいいのか
歯肉退縮は、歯の位置と歯槽骨の厚み、歯肉のタイプ、小帯や口腔前庭の形態、炎症、咬合、そしてブラッシング習慣など、複数の要因が重なって起こると考えられています。だからこそ、原因を一つに決めつけるより、その患者さんで何が重なっているかを見るほうが臨床的ではないでしょうか。「磨きすぎです」と断定するかわりに、「一緒に歯ぐきが下がる原因を考えてみましょうか」と言えると、指導の入口はずっと柔らかくなるかもしれません。
それでは、また次回〜🦷✨
参考文献
・Rajapakse PS, McCracken GI, Gwynnett E, Steen ND, Guentsch A, Heasman PA. Does tooth brushing influence the development and progression of non-inflammatory gingival recession? A systematic review. J Clin Periodontol. 2007;34(12):1046-1061.
・Heasman PA, Holliday R, Bryant A, Preshaw PM. Evidence for the occurrence of gingival recession and non-carious cervical lesions as a consequence of traumatic toothbrushing. J Clin Periodontol. 2015;42(Suppl 16):S237-S255.